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にっき

ようやくまともな彼氏ができて七転八倒。恋愛が感覚的によく分からない。

【読書】絡新婦の理

思考 うつ病 読書

うつ病の真っ最中に本を読むといつもと違った観点の感想を抱いたりするので、ちょっと書いてみようかと思う。

 

※ネタバレ注意(犯人等の核心には触れません)


文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

 

うつ病中に読書をするとどうしてもソレ関連の記述や描写に目が行ってしまう。

自分のEvernoteに残した読書メモを見返すと、追い詰められた美由紀について一行目に「うつ病じゃん」とあって笑った。

ちなみにこの「うつ病じゃん」は冷やかしでなく、「もうくるところまできちゃってんじゃん…」という心配の意である。

 


あの夜を境にして、自分を含めたこの世界全部が信じられなくなってしまっていたのだ。そう云う状態こそを呪いと呼ぶのかと、美由紀は今にして思う。

世界が歪んでなにもかも信じられなくなる感覚には非常に覚えがある。

この歪んだ視界から抜け出すのはとても骨が折れるもので、自分の世界の見方がおかしいのは分かるが、分かったところで抜け出せるものではないから困ってしまう。

 

美由紀はこの後、祖父の言葉をきっかけに少しずつ自分を取り戻していく。


――恐がンのはお前、自分だ。恐がってる者は、傍から見りゃ滑稽なだけだぞ。

まるで自分に言われているかのように思った。

無職の自分は世間の人々みんなに罵られるんじゃないか自分の職歴を見たらみんな石を投げてくるんじゃないか、と勝手に妄想して勝手に怯えていた。

でも、そんな自分を第三者の視点で見てみると確かに滑稽なだけだった。

というか、母親なんかはそんな私を見て「そんなわけないじゃーん」と実際のところ笑っていたな。 

 

そして、益や榎木津が学園に乗り込んでくることで美由紀の証言はようやっと認められ、美由紀の視界は開け、色付き、ようやくまともに思考が回っていく。

ここの移り変わりの描写がなんとも快感だ。

自分の考えがおかしいのは分かっている、分かっちゃいるけど絶望的な考えが頭を巡り続けてしまう。そんな状況からどうしたら抜け出せるだろう。抜け出せるとしたらどんな風だろう?と思うことはあっても、いつも上手くイメージすることはできなかった。

しかし、この小説はそれを見事に体感させてくれた。

 

別に、この小説を読んだからって実際に美由紀の如く即再起できるわけではないが、この小説を読むと歪んだ視界がピントの合った世界へと切り替わる瞬間を感じることができる。

そういうイメージを掴んでみたい、体感してみたい、という人にはこの小説はオススメだ。